HACCPの重要管理ポイントになる可能性が高いのが、製品の殺菌・滅菌工程や冷却・冷蔵保存工程です。食品製造において微生物汚染による食中毒は一番避けなければいけない品質事故と言ってもいいでしょう。
微生物汚染を防止するためのポイントは次の3つです。
- 微生物を付着させない
- 微生物を増殖させない
- 微生物を殺す
微生物による食中毒の第一歩は、食品に微生物が付着することです。微生物は、いたるところに存在します。目に見えませんが、空気中にも、机の上にも、人の手のひらにも、土の中にも・・・・、どこにでもいます。大腸菌群のような病原性の微生物もどこにでもいます。このような微生物を食品の製造工程における原材料や仕掛品に出来るだけ付着させないことが重要となります。微生物はどこにでもいる、と書きましたが、ヒトからの付着や製造器具などからの付着を防止することが重要となります。作業前の手洗い手順の標準化と従業員への教育、調理器具や製造機器の洗浄殺菌方法の標準化や機械化、などが具体的な対策となります。
しかし、製造工程における微生物の付着をゼロにすることは実際には非常に難しいことです。次に重要なのが付着した微生物を増殖させないことです。付着してしまった微生物を増殖させなければ食中毒には至りません。微生物の増殖には次のような因子が必要です。
- 栄養があること
- 水分があること
- 至適温度であること
- pHがその微生物に適していること
これらの1つの因子でも無くすことで微生物の増殖は阻止できます。しかし、食品製造において、原材料や仕掛品自体には栄養素や水分が十分に整っており、pHも極端な酸性やアルカリ性ではありません。管理できるのは温度となります。多くの微生物は低温度帯では増殖できません。具体的には4℃以下に原材料や仕掛品を保つことで、病原性の微生物の増殖は阻止できます。
最後に微生物を殺す、です。食品製造工程では加熱殺菌が主流です。調理器具や製造機器の洗浄殺菌では塩素系の殺菌剤が使用されます。微生物の付着を極力抑え、微生物の増殖を抑え、最後に残存した微生物を加熱殺菌しますが、この加熱殺菌温度が低かったり加熱時間が短いと微生物を十分に殺菌できません。例えば、大腸菌群の滅菌は60℃以上で30分、というのが条件となっています。この60℃を下回ったり、30分を満たせなければ、大腸菌群が残存してしまいます。加熱殺菌の条件を下回らないようにするためには以下のような対策が有効です。
- 温度計や温度センサーを定期的に校正する。
- 加熱温度にむらが出ないように攪拌等をしっかりする。
- 人によるばらつきやヒューマンエラーを防止するために、加熱工程を機械化したりIT管理する。
塩素系の殺菌剤については、その効力を常時保つために、洗剤の使用期限を遵守したり、次亜塩素酸の濃度管理を徹底することが重要となります。
この記事へのコメントはありません。