食品衛生法の改正により、全ての食品等事業者(食品の製造・加工、調理、販売等)がHACCPに沿った衛生管理計画を策定しなければならなくなりました。しかし、全ての食品事業者がHACCPを導入するのは非常に困難です。7原則12手順に沿ってマネジメントシステムを構築し、膨大な数の書類を管理し、行政や認証機関の査察を受け入れ、定期的な更新や保健所の査察のために色んな準備をし、、、、私も実際に乳業メーカーでHACCP事務局としてこのようなことを実施してきましたが、思い出しただけでゾッとします。
このように、HACCPを導入し認証を取得して更新していくことが非常に煩雑で、全ての食品事業者にこれを義務付けることがナンセンスであることは、厚生労働省も重々分かっています。ということで、今回義務付けられたHACCPの制度化は、本来のHACCP導入と比較すると、かなり簡素化されています。
HACCPの制度化は、①HACCPに基づく衛生管理、②HACCPの考え方を取り入れた衛生管理、とされています(取り扱う製品や事業者の規模によって2種類あり)。つまり、ガチのHACCPではなく、あくまでHACCPちっくな計画です。この2者に次のような違いがあります。
- 今回の義務化は認証制度ではありません。ガチのHACCPは認証制度です。これだけでも相当楽です。
- 製品の種類や事業者の規模によって、2種類あります。①HACCPに基づく衛生管理と②HACCPの考えを取り入れた衛生管理、です。ガチのHACCPにはこのような棲み分けはありません。
- ガチのHACCPは認証機関がシステムの監査を定期的に行います。今回の制度化では、地元の保健所が定期的な査察を行ったり、営業許可証の発行時の判断材料にするようです。日々記録をきちんと作成し、保健所の査察時に、記録を見せて説明する必要があります。
次に、①HACCPに基づく衛生管理、②HACCPの考え方を取り入れた衛生管理、の違いについてです。
- と畜場や食鳥処理場は①HACCPに基づく衛生管理、が求められます。これはHACCP7原則に沿った管理が求められる割と面倒なものです。と畜場や食鳥処理場、大規模な食品製造業では食中毒の影響が大きいためです。一般衛生管理からしっかりと固め、7原則に沿ってHACCPプランを構築していくため、認証制度ではないこと以外は、ガチのHACCPにかなり近い管理が求められます。しかし、該当する事業者はおそらくかなり少ないと考えられます。というのは、このように食中毒の危険性が高い事業者や大規模な事業者はすでにHACCPを導入している可能性が高いためです。HACCPの認証取得は自社ブランドの信用力を高めたり、OEM先やプライベートブランド先からの認証取得の要請も多いためです。
- 1以外の事業者には②HACCPの考えを取り入れた衛生管理、が求められます。殆どの事業者はこちらに該当すると考えられます。7原則12手順の全てを網羅する必要はありませんが、一般衛生管理をしっかり行い、危害分析を行い、必要に応じてCCPを設定して、きちんと記録をとって定期的に結果を検証する、が骨子となります。ガチのHACCPの絶対に外せない部分だけを抜き取った考え方です。
①HACCPに基づく衛生管理、②HACCPの考えを取り入れた衛生管理、については各食品等事業団体が手引書を作成しています。基本的にはこれらの手引書をもとに進めていけばHACCPの制度化に対応していくことは可能です。しかし、危害分析の工程が大きな障害になると思われます。大西経営コンサルティング工房では、各事業者の製品や工程を十分に把握したうえで、事業団体の手引書も考慮しながら、HACCP制度化に対応していきます。
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