HACCPの土台は一般的衛生管理です!!
一般的衛生管理はHACCPシステムの土台であることは、こちらの記事(なるほど!HACCPの土台となる一般的衛生管理)で説明しました。従業員の衛生教育、設備の保全、防虫管理、原材料の管理、建屋の修繕、このような基本的なことを一般的衛生管理といいます。一般的衛生管理は10の管理項目に分けられます。
施設設備の衛生管理
食品の製造現場や飲食店の厨房はもちろん、食堂や事務所そしてトイレなどがいつも衛生的に管理されていることです。不衛生な現場で食品を取り扱うことは、微生物汚染・異物混入・化学薬品の混入などの観点でリスクが大きいです。施設設備をいつもきれいに保つために、清掃箇所や清掃頻度を決めて、実施したことをきちんと記録に残していきます。
従業員の衛生教育
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)や微生物の特性、手洗いの手順や清浄区域への入室手順、エアシャワーの使い方など、衛生についての従業員への教育のことです。従業員の衛生教育で大切なことは、①継続して地道に行うこと、②教育記録をきちんととること、の2点です。保健所の査察では必ず従業員の衛生教育の実施状況が確認されます。教育記録をビシッと見せましょう。教育の日時・内容・先生・受講者・受講者のサインが記録された書類があればばっちりです。
機械器具の保守点検
配管や熱交換器のガスケット、バルブのパッキン、ポンプや撹拌機のメカシール、無菌フィルターなどの消耗品の定期交換、機械への集中給油やカム・カムフォロアへのグリスの塗布などの機械保全、計画停電など、食品製造に関与する機会器具の保守点検のことです。保守点検計画のもと保守点検を実施し、記録を残します。状況をみながら、過剰メンテのところは周期を延ばしたり、消耗品の交換頻度を見直し、適正なメンテナンス周期を確立していきます。ここでもやはり、しっかり記録を残すことが大事です。特に異常を見つけた際にどのような対応を行ったのかをきちんと時系列で記録しましょう。
そ族昆虫の防除
製造現場や厨房へのネズミや昆虫の侵入を防止することです。製品への昆虫の混入は重大な品質事故に繋がる可能性があり、絶対に阻止しなければなりません。ネズミも同様です。昆虫は、建屋内の光に誘引されたり気流で流れ込む外部飛翔昆虫と排水や汚水、カビなどから発生する内部発生虫に分けられます。各箇所にトラップを設置し、モニタリングをしながら、陽圧管理や建屋の隙間埋め、清掃箇所や頻度の見直しを継続して行っていきます。多くの事業者が防虫業者を利用し、このようなモニタリングと改善提案を外注しています。これについてもモニタリング結果・改善前後の効果などを記録しておくことが重要です。
使用水の衛生管理
食品工場や飲食店の厨房では大量の水を原料として、洗浄用水として使用します。水質は製品の品質に直接影響すると言っても過言ではありません。濁り・色・匂い・残留塩素は毎日、大腸菌群・一般細菌などは定期的に、重金属やヒ素などは1年に1回程度で確認し、記録をきちんと残します。水質検査を実施してくれる外部機関はたくさんあります。自社で検査出来ない場合は外部機関を利用し、検査報告書を保管しておきましょう。食品工場では屋上や屋外に貯水槽を設置していることがありますが、貯水槽の定期清掃も必要です。使用水の原水は水道水・井戸水・工業用水ですが、水道水は水道局が管理しているだけあって水質が安定しています。井戸水は地域によって水質にばらつきがあります。工業用水は天候や地震でダムの水質が大きく変動するため注意が必要です。
排水及び廃棄物の衛生管理
水物を扱ったり洗浄に大量の水を使う食品工場や厨房では排水が発生します。お金を払って下水処理をしている事業者もあれば、排水処理施設を設置し、清水を放流している事業者もあります。排水処理では大量の汚泥が発生しますが、汚泥の管理を怠ると虫や微生物の大量発生に繋がります。廃棄物も同様で炎天下に廃棄物を放置すると虫や微生物の大量発生に繋がり不衛生な状態となります。汚泥や廃棄物を産廃業者に引き取ってもらい、日時や業者、量を記録して保管します。
従業員の衛生管理
微生物汚染や髪の毛などの異物混入の殆どは人を介して発生します。これを防止するために、髪の毛や体毛が落ちにくいヘアネットやユニフォームを選定し、直接食品と接しないようゴム手袋を用意します。マスクの着用を義務付けたりもします。また、従業員の体調管理も重要です。ノロウィルスに感染した従業員は食品加工に従事するべきではありません。インフルエンザも同様です。従業員の体調を朝礼時に確認し、日々チェックして記録に残します。
食品などの衛生的取扱い
これは原材料由来の品質事故を防止するためのものです。受け入れる原材料の冷蔵温度・冷凍温度・色・梱包状態などを確認し、原材料の受入の都度検収を行い、検収結果を記録に残します。
食品の回収プログラム
仮に品質事故が発生し、市場に自社製品が流出した場合の回収プログラムを予め決めておきます。客先からのクレームの窓口の担当をどうするか、連絡ラインをどうするか、保健所含めた行政への連絡をどのタイミングで行うか、回収範囲をどのように決めるか、などです。実際にはケースバイケースでなかなかプログラム通りにはいかないことが多いですが、連絡体制をきちんと決めておくことで、初動が早くなり、回収範囲を絞ることが出来ます。
製品等の試験検査に用いる設備の保守点検
製品の検査や製造工程でモニタリングに使用している各種センサーの定期的な校正のことです。出荷やCCPの拠り所になっている検査機器がデタラメな数値を示していると、大きな品質事故に繋がる可能性があります。温度計、比重計、圧力計、pHメーター、粘度計などが該当します。これまで保健所や厚生局の査察を多く受けてきましたが、この検査機器の校正がきちんとされているかどうかのチェックは必ず欠かさずチェックされてきました。標準計と当該機器との計測のずれを定期的にチェックし、その結果や対策(大きくずれていたので交換)をしっかりと記録しておきましょう。
一見すると、難しそうと感じるかもしれませんが、日常実施されていることを、上記10の項目に当てはめて、出来ているところと出来ていないところを見える化すると、課題が分かり、計画的に改善が進みます。出来ていることが以外と多い!となることも多いはずです。実は。一般的衛生管理をしっかり行うことで、HACCPでCCPを設定しなくても済むケースもあります。また、CCPとなる工程を少なくし、HACCPの管理を簡素化することが出来ます。繰り返しになりますが、HACCPの導入においては、まず一般的衛生管理を徹底することからなのです。
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